上野の東京国立博物館の特別展「北京故宮博物院200選」へ行ってきました。
目玉展示である「清明上河図」は展示が1/24まででしたので、実物は見られませんでしたが(複製は見られます)、非常に満足度が高かったです。
北京の故宮博物館には過去2回行ったことがあったのですが、それも10年以上前の話でしたので、せっかく日本に来たんだし、どうせほとんど覚えていないだろうから見に行ってみようかというわりと軽い気持ちだったのですが、
1,当たり前だがすべて日本語で解説してくれるのでその作品の背景までよくわかり、勉強になった。
2,音声ガイド(500円)の音声が松平定知(「その時 歴史が動いた」の人)で、これが名演で、頭に入ってきやすくてよかった。借りる価値あり。
3,200選と数を絞ってくれているおかげで、鑑賞する集中力が維持できた。
と期待以上に行ったかいがありました。
行った人ならわかると思うんですが、故宮博物館って紫禁城の中にあって、展示場がアホほど広い上に、馬鹿みたいに展示物が多くて(それこそ200なんてもんではない)とにかく全部見るのが大変なんですよ。正直、回っているだけで疲れはててしまう。そういう意味では、専門家でなければ、現地で見るより今回の方が充実した鑑賞ができると思います。
平日の開館直後に行ったわりには、それでもそこそこ混んでいたので、土日なら開館前か、閉館間際(実はこの時間帯が人気の美術館などを見に行く時の穴場)に行ったほうがいいと思います。
展示は二部構成で、第一部が宋代〜清代の書画や陶磁器、第二部が清朝宮廷文化というテーマ展示になっています。
西洋や他の地域の美術と違って、中国の場合、芸術・文化・思想・哲学・政治・経済のすべての分野を士大夫層(知識人であり、高級官僚でもある)が一手にひきうけているので、歴史的に重要な人物の名前がでてきたりして、中国美術をあまり知らなくても、歴史に興味があったら結構楽しめるのもいいところです。
朱子学の朱熹や詩人の黄庭堅、清の乾隆帝の書、宋の徽宗皇帝の絵など別の分野での有名人の作品を見ることができました。
その他にも
商や周など、とんでもなく古い時代の青銅器のつくりや模様の精緻さから、当時の技術や芸術の水準に驚いたりとか。
宋代までの絵は写実主義全盛だったのが、元代以降、徐々に自分の心に感じたものを抽象的に表現する文人画が流行してくる、といった美術史的な流れは西洋の印象派の隆盛を思わせられたりとか。
陶磁器の分野では、宋代までシンプルな模様で薄い緑がかった色の磁器が多かったのが、元代以後青い色が使われ始め、様々な模様がつくようになったのは、元が西アジアを征服してそこで手に入れたコバルトと、それを陶磁器に利用する現地の技術者達を得て彼らからコバルトを陶磁器に使う技術を手に入れたからであるとか。
清代の皇帝はチベット仏教の信者であった、とか(なんと乾隆帝自身の曼荼羅までありました)。
美術史にとどまらない範囲で、自分が今まで知らなかったことがたくさんあって、美術品そのものだけでなく、展示品に添えられている説明文のおかげで、とても勉強になりました(これが日本の美術館や博物館で外国のものを見る最大のメリット)。
もし、この特別展に少しでも興味があったり、いこうかどうか迷っている方がいたら、特別展の終了は2/19とまだ期間はありますので、行ったほうがいいと思います(混雑は覚悟の上で、たぶん終了間際だとえらいことになるでしょうから少しでも早めに)
最後に関連ウェブサイトの紹介を。
私は行く前にほとんど見なかったのですが、今チェックしてみるとなかなか充実していて、これを見ているだけで結構おもしろいので、行く前に見ておくといいと思います。
(このページは特に目を通しておいたほうがいいです)
「北京故宮博物院200選」公式ページ
1089ブログ(北京故宮博物院200選に関する東京国立博物館公式ブログ記事。展示のみどころが紹介されていています。良記事が多くオススメ)
http://www.tnm.jp/modules/rblog/index.php/1/category/16
0 件のコメント:
コメントを投稿