2012/04/29

はじめての「金瓶梅 」 1 金瓶梅ってどんなお話?

第二十七回より 
葡萄棚で戯れる潘金蓮と西門慶。
西門慶の膝に乗っているのは使用人の龐春梅。

アヒオ「みなさん、こんにちは。「はじめての『金瓶梅』」の時間がやってまいりました。

ナビゲーターは私、アヒオでお送りさせていただきます」

アヒコ「どうしたの?アヒオ君、突然」


アヒオ「実は、これから数回にわたって中国の小説の中でも「天下第一の奇書」と呼ばれた『金瓶梅』を紹介していこうと思うんだ」

アヒコ「流行っているわけでもないのにまた唐突ね」

アヒオ「なにをいってるの、アヒコちゃん、流行っていないっていうことは、これから流行るかもしれないっていうことじゃないか。ボクは時代の2〜3歩先を進んでいこうとしているんだよ。

アヒコ「先走りしすぎて迷子になってしまわないか心配ね

アヒオ「大丈夫。まかせとけって。ところで、アヒコちゃんは『金瓶梅』についてどのぐらい知っている?」

アヒコ「ほとんど何も知らないわ。確か『金瓶梅』って中国の有名なポルノ小説じゃなかったっけ?よりによって、なんでそんなものをわざわざ?

アヒオ「OK。それぐらいのことなら知っているんだね。

確かにこの小説、露骨な性描写があって淫の用語だけで小事典ができるぐらいいろんな言葉が使われているので、中国本土ではいまだに規制されていてノーカットの完本はないみたいだし、日本でも戦前までは禁書になっていて、戦後も性描写の部分は省略して翻訳されることが多くて、完訳がなかなか出なかったぐらいだから『金瓶梅』といえばとりあえずエロ、という理解で間違ってはいない。Googleで検索しても『金瓶梅』が風俗店の名前に使われていたりするぐらいだしね。

ただね、この小説、一般的にはあまりにもエロの側面ばかりがクローズアップされすぎているけれど、それだけで片付けるにはあまりにも惜しい面白小説だっていうことを、もっと知ってもらってもいいんじゃないかなと思ったんだ。

なにしろ中国の「四大奇書」の一つとして『三国志演義』『西遊記』『水滸伝』というそうそうたる作品と並び称されるものだからね」

アヒコ「他の3つは有名よね。でも金瓶梅は読んだことがないどころか、ポルノっていうこと以外、どんな内容なのかも知らないわ。どんなお話なの?

アヒオ「この『金瓶梅』は先行する『水滸伝』の影響を強く受けた、というよりも今風に言うと『水滸伝』のキャラクターを使ったスピンオフ、同人誌みたいな作品なんだ。

アヒコちゃんは『水滸伝』に出てくる「行者の武松」のお話は知っている?」

アヒコ「残念ながら水滸伝も、なんとなく知っているだけで、実はちゃんと読んだことないのよ


アヒオ「よし、じゃあまずそこからだね。

手短に言うと、『水滸伝』の中の1エピソードなんだけれど、主人公は武松という素手で虎を殺したことで有名になった豪傑なんだ。



光栄のゲーム「水滸伝 天命の誓い」より武松。
知力38というのはつまり、そういうことです。


その武松が兄夫婦のところへ尋ねていくんだ。

お兄さんの名前が武大。この武大は弟の武松とうってかわって風采の上がらない貧相な男。そして兄嫁の名前が潘金蓮。これが絶世の美女なんだけれど、実はものすごい性悪。

彼女はもともとお金持ちの家で小間使いをしていたけれど、その美しさゆえに旦那が手をつけようとしたのを奥さんにいいつけて、逆ギレして怒った旦那が、醜男で有名な武大のところへ嫁に出してしまったんだ。そんな経緯で夫婦になったもんだから、潘金蓮は常々、夫に不満だった。

そこへたくましい美男子の武松がやって来た。夫にうんざりしていた潘金蓮はこんな素敵な弟がいたんだと、さっそく武松を誘惑するんだけど、この武松っていうのが馬鹿だけどクソ真面目な男なんで、それをきっぱりとはねつけるんだ。

その後、武松は仕事で長期出張に出るんだけれど、その間に武松をあきらめた潘金蓮が今度は、薬屋をやっている金持ちの西門慶という色男と出会って、すぐにそいつとできてしまうんだ。で、武大の留守中に二人は浮気を重ねるんだ。

ある日武大は浮気の現場に居合わせて、西門慶に殴りかかろうとしたんだけれど、逆に返り討ちにあって重症を負い、これがきっかけで病床に臥してしまう。

西門慶といっしょになりたかった潘金蓮は、武大が寝たきりなのをいいことに、西門慶から毒薬をもらって薬と称して武大に飲ませて、毒殺しちゃうんだ。

その後、出張から帰ってきた武松は兄の死に不信を感じ、やがてそれが二人の手による毒殺だと知って、怒り狂って藩金蓮と西門慶及びその家の者たちを皆殺しにして、その後自首して流罪となってしまうっていうお話なんだ。

『水滸伝』では武松の物語はこの後、流罪になってからも続くんだけれど、『金瓶梅』では「もし西門慶と潘金蓮が、武松に殺されずにすんだら」という仮定で、その後のお話が進んでいくんだ」

アヒコ「なるほどね。『水滸伝』の一部と設定やキャラはおんなじで、途中からパラレルワールドのお話に変化していくから今で言う同人誌みたいなものっていうことなのね。

でも、よくそんな同人誌まがいが、『水滸伝』と並び称されるほどの作品になったわね」

アヒオ「実は一部のキャラや設定こそ『金瓶梅』は『水滸伝』の借り物だけれど、中身は全然違う、だけじゃなくて文学的な価値もとても高くて、中国小説史上の大転換となったといわれるほど、画期的な作品だったんだ。

それじゃあ、『金瓶梅』のどこがすごいのかっていうのは、また次回」


<参考文献>

中国の五大小説〈下〉水滸伝・金瓶梅・紅楼夢 (岩波新書 新赤版 1128)

金瓶梅―天下第一の奇書 (中公新書)

<キャスト>


アヒオ・・・アヒル系男子。好きなチームはセレッソ大阪。


アヒコ・・・アヒル系女子。好きなスイーツは牛乳プリン。
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2012/04/22

中国語ジャーナル 2012年 春号


アヒオ「うーん。季刊になってしまったんだな

アヒコ「何の話?」

アヒオ「久しぶりに読もうと思って買ってみたら、中国語ジャーナルが、今まで月刊だったのが、今年の3月号から年4回の季刊になっていたんだ」

アヒコ「あら、やっぱりあんまり売れてなかったのかしらね」


アヒオ「確かに、もともと英語と比べると需要は圧倒的に少ないだろうし、個人で毎月買うのはボリューム的にも経済的にもちょっと大変な部分があったから、個人的には年四回の方が買いやすくなったかな、と思わないでもないけれど、本当に人気があったら発行回数が減るはずがないから、この変更は少し残念だな。

それはともかく、今号から季刊としてリニューアルしたことだし、以前のこのサイトの「「中国語ジャーナル」と「聴く中国語」っていう記事が、長期間にわたってアクセス数を積み重ねていて地味に人気で、この分野に地味な需要があるみたいなんで、今日は中国語ジャーナルの2012年春号を紹介してみるね」

目次


「中国嫁☆中国語」

アヒコ「あら?「中国嫁日記」がここでも連載されているのね」

アヒオ「そう。月さんが中国語をジンさんに教えるという体裁で、中国語ジャーナルらしいマンガになっているよ。こういう旬なネタをとりいれているあたり、さすがだね」



「中国語学習Q&A」

アヒコ「これはいかにも語学雑誌らしい文法のQ&Aのコーナーね」

アヒオ「この雑誌を買う人は、レベルの違いこそあれ中国語学習者であることに間違いはないだろうし、だいたい日本人が文法でひっかかる部分なんてそんなに違わないから、こういうコーナーは必須だね」


左「おだそらの読む中国異文化消化酵素」 右「新語・流行語で知る中国社会」

アヒコ「中国語や中国に関するエッセイね」

アヒオ「小田空さんは、中国に関するマンガやエッセイをよく書いている漫画家さんだよ。

他にも中国語といえば絶対名前が出てくる相原茂さんのエッセイもあるし、この雑誌は、中国に関する読み物として楽しめる日本語のコラムの充実っぷりが、なかなかのものなんだ。ここらへんが「聴く中国語」との最大の違いかな」


「今月のニュース」

アヒコ「これは、学習用のページね」

アヒオ「そうだね。これは中国語のニュースだ。もちろん、CD付きだよ。ニュースが6本、そのうち2本は遅い音声と速い音声と2バージョン入っていて、全てピンイン付きなんだ」


インタビュー [俳優]アレックス・ルー

アヒコ「俳優のインタビューもあるのね」

アヒオ「エンタメ系の人のインタビューは定番だね。この他にもドラマのワンシーンのような柔らかいものから、中国人作家のエッセイ、大学教授のインタビューのような固めの内容までいろいろあるのは嬉しいね」


アヒコ「なるほどね。他に面白かった記事とかはある?」

アヒオ「そうだな。今号の特集に「召しませ!中国語2012ー中国語へのいざない」っていう初学者に向けて中国語がどんな言葉なのかを紹介する、春らしい企画があるんだけれど、その中で、大阪弁が中国語の声調と似た現象があるっていうのは言われてみれば確かにそうだと思ったな」


アヒコ「どんなふうに?」

アヒオ「大阪弁が分かる人は大阪アクセントでこれらの単語を発音してみればいいんだけれど、

第一声 高く平らかに (例) 詩、蚊(シー、カー)
第二声 尻上がりに (例)火、輪 (ヒー)
第三声 助詞が付くと低く、しばしば短く (例)火が、輪が (ヒーが、ワーが)
第四声 上から急降下 (例) 歯、毛(ハー、ケー)



確かにそんな感じなんだよ。大阪弁って結構音の高低差が激しいから似ているのかもしれないね。どの程度役に立つかはともかく、これはなかなか発見だったな」


アヒコ「ふうん。で、これ、おいくらぐらいなの?」



アヒオ「お値段税込で1.680円。季刊化で分厚くなったこともあって少し高いけれど、まあマイナー語学雑誌だからこのぐらいするのは仕方ないかなって感じだね。興味があったら一度本屋さんにいって探してみるといいと思うよ。ちょっと大きめの本屋さんじゃないと置いていないと思うから注意してね」

<キャスト>


アヒオ・・・アヒル系男子。好きなチームはセレッソ大阪。


アヒコ・・・アヒル系女子。好きなスイーツは牛乳プリン。