2013/01/31

アトゥール ガワンデ 「アナタはなぜチェックリストを使わないのか?【ミスを最大限に減らしベストの決断力を持つ!】」


アヒオ「ブログを見ているみんな、こんにちは!


今日は、このサイトではめずらしい実用的な本の紹介だよ。






アヒコ「確かにこのサイトでは「こんなの読んでどうすんの?」みたいな本の紹介、多いもんね(笑)


で、この本なんだけれど、本の題名を見ただけで、だいたいどんな本か想像出来ちゃうわね」

ガチョオ「そうやな。まあ、チェックリストがどれだけ有益かっていう本なんやろうな。


そりゃあ、チェックリストは使わんより、使ったほうがミスや漏れも減るやろうし、した方がええんやろうけれど、でも実際の現場やと役に立つとわかっててもなかなか気持ちと時間に余裕がなくて、せっかく作っても、結局、使わんようになることも多いな。

めんどうくさいんよな。正直」

アヒオ「まあまあ、二人ともそう言わないで。

ガチョオ君、まさに君みたいな人にこそ、この本を読んで欲しいんだよ。確かに内容を一言で言うと、ガチョオ君の言うとおり、チェックリストの有益性を主張した本だ。

でも、これを読んだら、ガチョオ君も自分でチェックリストを作ってみたくなるかもしれないよ」

ガチョオ「そうなんや。で、どんなことが書いてあるんや?」

アヒオ「まずこの筆者のアトゥール・ガワンデって人だけど、この人はもともとは外科医なんだ。

彼は最初、他の医師の影響で、業務にチェックリストを導入して試行錯誤するんだけれど、この時の経験から、他の分野でもチェックリストを使ってうまくいっている例があるのかを研究するようになったんだね。

そして、彼はチェックリストが想像以上に幅広い分野で、素人からベテランまで万人に有効らしいということを発見するんだ。

だからこの本で紹介されているチェックリストの導入例は医療分野だけでなく、建築や航空、料理に投資や災害の対応まで多岐にわたるよ」

アヒコ「そうなのね。でもなんでもかんでもチェックチェックってやっていたら、それだけで時間がなくなってしまいそう」

アヒオ「そう、アヒコちゃんの言うとおり、ボクらがすぐに想像するチェックリストっていうのは、上層部の要求を部下に忠実にこなさせるための細かい手順の確認、漏れの予防が目的のことが多いよね。


もちろん、こういうチェックリストも単純な仕事にはとても効果的なんだけれど、この本に書かれているチェックリストはこういう「単純な仕事」のためのものだけではないんだ」

ガチョオ「ってことは、「複雑な仕事」にも使えるチェックリストもあるってことか?」

アヒオ「そうなんだ。予想外の複雑な問題に対処するには、決定権を中央から末端に分散させるべきだという考え方を元に作ったチェックリストだってあるんだよ。

それには、なにか予想外のトラブルがあった際に、各自が知識と経験を生かした対応ができるような権限を与えておく、その代わり、コミュニケーションは確実に取らせ、責任も負わせるんだ。

具体的に言うと、例えば建築現場だと、審査官が建築物の審査の際、各項目を自分でいちいちチェックするだけではなくて、しっかりしたチェックの仕組みが整っているのかを主に見て、現場の建築者たちに「建築物が基準を満たしているのかを確認しました」という誓約書にサインをさせて、審査官と建築者に権限と責任を分散させているんだ」

アヒコ「なるほど。自分が個々の作業をチェックするのではなくて、チェックの仕組みが整っているのかをチェックして、個々の作業のチェックは各現場に任せて、その代わり彼らにも責任を負わせるのね。

確かにそうすれば複雑な仕事にもチェックリストを活用できそうだわ」

アヒオ「そう。この「複雑な事態に対処するためには権限を出来る限り分散させる必要がある」という考え方はとても大事でね。



この考え方を元にうまくいった成功例と、それができずに惨憺たる結果になった失敗例が2005年、アメリカにハリケーン・カトリーナが来た後のニューオリンズ州での災害対策で対照的にあらわれて明暗を分けたんだ。

失敗例は連邦政府。

彼らは状況が刻々と変化する中、誰が権限を持つべきかという論争を延々して、いつまでたっても地元政府に権限を譲ろうとせず、ましてや民間に権限を譲るなんて考えもしなかったので、結果、情報がうまく各処へ伝わらず、決断すべきことは山のようにあったのに、決断に必要な情報は不足してしまい、政府の救援策は機能せず、市は無法地帯となってしまったんだ。

それに対して成功例がウォルマート。

社長はミーティングでこう言ったんだ「自分の持つ権限以上の決断を下さなければならない状況もたくさん発生すると思う。手元にある情報を元にベストの決断をしろ。そして何より、正しいことをしろ」と。

社長の命令はこれだけだったんだけれど、命令は各店長に伝わり、彼らはそれぞれ独自の考えでベストを尽くし、被災した人々の救助に素晴らしい活躍を見せたんだ」

ガチョオ「うーん。なんか政府の対応っていうのを聞いていると、まんま日本の原発事故のことを思い出すなあ。やっぱり公共機関はタテ割りのお役所仕事やからダメなんかなあ」

アヒオ「うーん。この本にも書いてあるけれど、この災害時は、ほとんどの民間企業も政府同様うまく対応できていなくて、むしろウォルマートみたいにうまく動けた企業のほうが例外的だから、政府が、民間企業がっていう話ではないと思うよ。

やっぱり大事なのは「本当に複雑な状況、不確定要素が多い状況では、中央から全てを指示しようとすると、必ず失敗する」という教訓を活かすことが大事なんだろうね。

そして、筆者はこの教訓を元に、複雑な状況下では、チェックリストが成功に必要不可欠だ、という仮説を提唱するんだ」

アヒコ「複雑な問題に対処するために、権限を分散させるのが大事なのはよくわかったけれど、チェックリストを作る上での注意はその他にもあるのかしら?

さっきの建設現場のように、チェックの仕組みをチェックして、現場にも責任を分散させるっていうのもわかるけれど、それだけでは充分じゃないような気がするんだけれど?」

アヒオ「うん。他にもチェックリストを作る上で、いくつかポイントがあるんだけれど、全部紹介すると長くなってしまうから、もう一つ、個人的になるほど、と思った点を紹介するね。

ある外科手術のチームでは、手術ごとに毎回チームメンバーが入れ替わるので、チームワークを向上させるためのチェック項目を導入しているんだ」

ガチョオ「チームワークを!?チェックリストでそんなことできるんか!?」

アヒオ「そうなんだ。実際に聞いてみればなんでもないことなんだけどね。

まず、「一分でいいから全員が必ず話し合うこと」

これはコミュニケーションのチェックであると同時にチームワークを高める方策なんだ。

次に「スタッフはお互いの名前を知っておくこと」あるいは「手術を開始する前にスタッフがお互いに名前と役割を紹介し合うこと」というチェック項目を作るんだ。

こういう自己紹介を前もって行うことによって、全員に話す機会を与え、その後問題点を提起したり、解決策を出しやすくなるし、当事者意識と責任感が高まって、チームワークも良くなるんだって」

ガチョオ「おー。なるほど。単純やけど、確かにチェックリスト項目にして毎回きちんとこれをやったら、効果ありそうやなあ。おとなしいやつとかは普通、機会をあたえないとなかなか自分から話したり参加したりしようとせえへんもんな」

アヒオ「他にもチェックリストを作成する時は「どういうタイミングでそのチェックを行うのか」とか、「そのチェックリストが実用的かどうか、実際に現場で使ってもらって確認したのか」など、有用なチェックリストを作る方法なんかもいろいろ書いてあって、巻末に「チェックリスト作成のためのチェックリスト」として表としてまとめられているんだ。これはうれしいね」

アヒコ「「チェックリスト作成のためのチェックリスト」は興味あるわ。これを見れば私も自分の生活習慣の改善とか仕事にも活かせるチェックリストが作れるかもしれないわね」

ガチョオ「オレもちょっとチェックリストのことをなめてたわ。ルーチンワークの職種の人が使えばええ、ぐらいに思ってたもんな。

これを読んで、チェックリストをどのぐらいうまく応用できるのか、ちょっとやってみたくなったな」

アヒオ「興味を持ってくれてうれしいよ。

本自体は、ちょっと具体例が細かすぎて、正直、無駄に長いなあと思う箇所も多々あったんだけれど、巻末の「チェックリスト作成のためのチェックリスト」の表を確認するだけでも、この本を手に取る価値があると思うよ。ボクもこの表の部分だけは自分の手元に書き写しておいたぐらいだからね。

おや、そろそろ時間か。それじゃあ今日はこのへんで」


三羽「それじゃあみんな、またね〜」



To Be Continued...


<キャスト>


アヒオ・・・アヒル系男子。好きなチームはセレッソ大阪。


アヒコ・・・アヒル系女子。真面目で好奇心旺盛な女の子。好きなスイーツは牛乳プリン。

ガチョオ・・・ガチョウ系男子。好きなチームはガンバ大阪。


白鳥(しらとり)先生・・・スワン系アラサー女子。カモ文化学園の教師。独身。学園のマドンナ的存在で、密かに思いを寄せる男子生徒多数。好きな話題はシモネタ。好きな牛丼系チェーン店は松屋。

2013/01/28

書を芸術にした男 東京国立博物館 特別展「書聖 王羲之」



アヒオ「ブログを見ているみんな、こんにちは!

今日は、今、上野の東京国立博物館でやっている、


日中国交正常化40周年、東京国立博物館140周年記念の特別展「書聖 王羲之の話題だよ」

アヒコ「そういえば確かに去年、日中国交正常化40周年記念だったわね。そういえば。


よりによって、そんな年に日中関係が大変なことにならなくてもねえ」

アヒオ「うん、全く間が悪いとしかいいようがなかったよ。で、今回の王羲之展なんだけれど、日本人でも学校で書道を習った人ならだれでも一度はその字を見たことがあるぐらいの有名な書家だ。


後の書家はみな王羲之の書を手本にしてたぐらいで、その後世に与えた影響の大きさから「書聖」とさえ呼ばれている存在なんだ」

アヒコ「へええ。王羲之(おうぎし)って書家なんだ。書道の時間かあ。あんまり覚えていないわねえ。いつぐらいの時代の人なの?」

アヒオ「アヒコちゃんだって書道の時間に、絶対見ているはずだよ。

彼の代表作「蘭亭序(らんていじょ)」ぐらいは教科書のどこかに書いてあったのを覚えていないかなあ。まあ、いいや。

王羲之は生没年が307~365年で、中国の東晋時代の人なんだ。東晋っていうとおおざっぱにいって三国志の時代の後、隋の時代の前ぐらいの時代だね。

出身は山東省。琅邪(ろうや)というところで、琅邪の王氏といえば、当時の名門貴族で、彼は漢や魏以来の諸家の書を集大成して、芸術にまで高めた人なんだ」

アヒコ「蘭亭序、蘭亭序・・・。なんか聞いたことあるようなないような。でもまあ、その王羲之って人が書いた書が今回展示されているってことなのね?」

アヒオ「いや、実は厳密にはそうではないんだ。

実は王羲之が実際に書いた書そのもの(真蹟)は、戦乱などで失われて現在、存在していないんだ。だから、今、王羲之の書として伝わっているのは全て唐代以降に複写したものや、石版や木版に模刻して制作した拓本なんだよ」

アヒコ「え?そうなんだ!じゃあ今回の展示品は全部コピーってことなの?

本物はもうこの世には残っていないのね・・・」

アヒオ「残念ながらそうなんだ。でも王羲之の書は幸いとても人気があって、複写や拓本がたくさん残っているから、ボクらでもこうして見ることができるんだよ。

特に唐の高宗の思い入れは半端じゃなくて、自分が死んだ時に副葬品として王羲之の「蘭亭序」を一緒に埋葬させたぐらいなんだ。

彼は熱心に王羲之の書を蒐集して、模本を作らせたんだけれど、このできがとても良くてね。なんと、後世の虫食いの後まで再現しているぐらい精巧なんだ。

だから、これを見れば王羲之の書の本物がどんなものだったか、現代でもほぼ完全にわかるんだよ。

でもそこまでハイレベルな模本はさすがに数が少なくて、現在は10点程度しか残っていないんだ。だから今回の展覧会ではとても貴重なものが見られるんだ」

アヒコ「へええ。書って中国ではそんなに重視されていたのね。西洋とは全然違う文化よね」

アヒオ「そうだね。西洋にもカリグラフィーっていうのはあるけれど、文化的、社会的、芸術的重要度でいうと、中国の「書」の重要性は西洋の比じゃないだろうね。

中国では「詩・書・画・篆刻(てんこく。印章を掘ること)」の4つの芸術を「文人四芸」と言うんだけれど、なかでも「書」はその基本となるものだからね。

それに、現実問題として、科挙では王羲之の技法で書かなければ答えが合っていても合格にならなかったりしたから、知識人や官僚になりたい人は、好むと好まざるとにかかわらず、みんな王羲之の書を学ばざるをえなかったっていう事情もあったんだ」

アヒコ「字が汚いと試験にも合格できないの!?

字を書くのが下手な人は大変ね。

書道が中国で重視されたのも納得だわ」



アヒオ「ちなみに中国では「書道」ではなくて「書法」って言うんだけどね。なんでも「道」にしてしまうのはいかにも日本らしいね。

それはともかく、今回の展示だけれど、王羲之だけではなくて、歴代の有名な書家の字や、漢字や書体の歴史的変遷なんかも展示してあるんで、あまり難しいことを考えずに、気軽にいろんな書体の美しさを楽しめばいいんじゃないかな。

今風に言うといろんなフォントがあって、しかも漢字自体膨大な種類あるから、いろんな字体が見られて面白いよ。

それからこのサイトにとって重要なことがもう一つ。

ボクも今回の特別展へ行って初めて知ったんだけれど、王羲之って実は重度のガチョウマニアだったんだよ」

アヒコ「ガ、ガチョウ!?

アヒルじゃなくてガチョウなの!?」

アヒオ「うん。実は王羲之はガチョウが大好きで、自分でもたくさん飼っていたんだ。

その他にも、彼とガチョウに関するエピソードは文献にいろいろ残っているんだ。

例えばこんなの。


ある老婦人が飼っている鵞鳥が、とても良い鳴き声をしていると評判だったので、王羲之はそれを大金で買い取ろうとしたんだけれど、老婦人に断られてしまったんだ。

そこで、彼は親類と友人を連れてその声を聴きに行こうとした。でも老婦人は彼らがやってくると聞いて、彼らをもてなそうとわざわざその鵞鳥を料理してふるまったんだ。王羲之はがっかりしちゃって、長い間嘆き続けたんだって。



ガチョウ。上海にて撮影


アヒコ「ガチョウの鳴き声にこだわるなんて、王羲之なかなか通ね・・・。

そうなのね。アヒルじゃないのが残念だけれど、これを聞いたらガチョオくんもきっと喜ぶわね。

私も王羲之に急に親近感が湧いてきたわ」

アヒオ「そうだね。

ガチョウ好きに悪い人なし、だ。

この特別展「書聖 王羲之」は3/3(日)までやっているから、まだ時間があるので興味がある人はぜひ一度観に行ってみたらどうかな。


それじゃあ、今日はこのへんで」

二羽「それじゃあみんな、またね〜」


To Be Continued...






<キャスト>

アヒオ・・・アヒル系男子。好きなチームはセレッソ大阪。

アヒコ・・・アヒル系女子。真面目で好奇心旺盛な女の子。好きなスイーツは牛乳プリン。

ガチョオ・・・ガチョウ系男子。好きなチームはガンバ大阪。

白鳥(しらとり)先生・・・スワン系アラサー女子。カモ文化学園の教師。独身。学園のマドンナ的存在で、密かに思いを寄せる男子生徒多数。好きな話題はシモネタ。好きな牛丼系チェーン店は松屋。