
今日は、今、上野の東京国立博物館でやっている、
日中国交正常化40周年、東京国立博物館140周年記念の特別展「書聖 王羲之」の話題だよ」

よりによって、そんな年に日中関係が大変なことにならなくてもねえ」

後の書家はみな王羲之の書を手本にしてたぐらいで、その後世に与えた影響の大きさから「書聖」とさえ呼ばれている存在なんだ」


彼の代表作「蘭亭序(らんていじょ)」ぐらいは教科書のどこかに書いてあったのを覚えていないかなあ。まあ、いいや。
王羲之は生没年が307~365年で、中国の東晋時代の人なんだ。東晋っていうとおおざっぱにいって三国志の時代の後、隋の時代の前ぐらいの時代だね。
出身は山東省。琅邪(ろうや)というところで、琅邪の王氏といえば、当時の名門貴族で、彼は漢や魏以来の諸家の書を集大成して、芸術にまで高めた人なんだ」


実は王羲之が実際に書いた書そのもの(真蹟)は、戦乱などで失われて現在、存在していないんだ。だから、今、王羲之の書として伝わっているのは全て唐代以降に複写したものや、石版や木版に模刻して制作した拓本なんだよ」

本物はもうこの世には残っていないのね・・・」

特に唐の高宗の思い入れは半端じゃなくて、自分が死んだ時に副葬品として王羲之の「蘭亭序」を一緒に埋葬させたぐらいなんだ。
彼は熱心に王羲之の書を蒐集して、模本を作らせたんだけれど、このできがとても良くてね。なんと、後世の虫食いの後まで再現しているぐらい精巧なんだ。
だから、これを見れば王羲之の書の本物がどんなものだったか、現代でもほぼ完全にわかるんだよ。
でもそこまでハイレベルな模本はさすがに数が少なくて、現在は10点程度しか残っていないんだ。だから今回の展覧会ではとても貴重なものが見られるんだ」


中国では「詩・書・画・篆刻(てんこく。印章を掘ること)」の4つの芸術を「文人四芸」と言うんだけれど、なかでも「書」はその基本となるものだからね。
それに、現実問題として、科挙では王羲之の技法で書かなければ答えが合っていても合格にならなかったりしたから、知識人や官僚になりたい人は、好むと好まざるとにかかわらず、みんな王羲之の書を学ばざるをえなかったっていう事情もあったんだ」

字を書くのが下手な人は大変ね。
書道が中国で重視されたのも納得だわ」

それはともかく、今回の展示だけれど、王羲之だけではなくて、歴代の有名な書家の字や、漢字や書体の歴史的変遷なんかも展示してあるんで、あまり難しいことを考えずに、気軽にいろんな書体の美しさを楽しめばいいんじゃないかな。
今風に言うといろんなフォントがあって、しかも漢字自体膨大な種類あるから、いろんな字体が見られて面白いよ。
それからこのサイトにとって重要なことがもう一つ。
ボクも今回の特別展へ行って初めて知ったんだけれど、王羲之って実は重度のガチョウマニアだったんだよ」

アヒルじゃなくてガチョウなの!?」

その他にも、彼とガチョウに関するエピソードは文献にいろいろ残っているんだ。
例えばこんなの。
ある老婦人が飼っている鵞鳥が、とても良い鳴き声をしていると評判だったので、王羲之はそれを大金で買い取ろうとしたんだけれど、老婦人に断られてしまったんだ。
そこで、彼は親類と友人を連れてその声を聴きに行こうとした。でも老婦人は彼らがやってくると聞いて、彼らをもてなそうとわざわざその鵞鳥を料理してふるまったんだ。王羲之はがっかりしちゃって、長い間嘆き続けたんだって。
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ガチョウ。上海にて撮影 |

そうなのね。アヒルじゃないのが残念だけれど、これを聞いたらガチョオくんもきっと喜ぶわね。
私も王羲之に急に親近感が湧いてきたわ」

ガチョウ好きに悪い人なし、だ。
この特別展「書聖 王羲之」は3/3(日)までやっているから、まだ時間があるので興味がある人はぜひ一度観に行ってみたらどうかな。
それじゃあ、今日はこのへんで」


To Be Continued...
<キャスト>




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