2012/02/18

映画「TIME タイム」

昨日公開の映画「TIME タイム」を見てきました。


人に誘われて、というわけでもなくわざわざ映画館へ見にいったのは本当に久しぶりで(しかも初日に)、それもひとえにこの映画が自分好みでおもしろそうで、傑作の予感がしたからでした。

で、感想ですが、結論から言うと「おもしろかったけれど、期待はずれだった」です。

私は映画館へ行くと、体調に関係なくかなりの確率で寝てしまうのですが、この映画では一度も寝ることなく最後まで見ることができたので、おもしろかったのに間違いはないのですが、しかしです。

ここからは内容にふれますので、先入観なしで見たい人はここまでで読むのをやめておいてください。

この世界には7つの法則というのがあります。


1, この世界の唯一の通貨は時間

2, すべての人間の成長は25歳でストップする

3, この世界は2つのゾーンに分かれている

4, すべての人間の左腕には、<ボディクロック>と呼ばれるデジタル時計が刻まれている。

5, 25歳になった瞬間にボディクロックが起動し、残りの”余名”がカウントダウンされる

6, 時間監視局員(タイムキーパー):全ての人間の時間を管理する

7, 時間はお互いの手をつなぐ行為により”分け与える”または”奪う”ことが可能


この設定のおもしろさにすごく期待して見にいったわけですが、どうもいかしきれていないような印象でした。

特に2番目の全ての人間の成長が25歳でストップするというところですが、この25歳っていう年齢が物語上あまり必然性がないんですね。主人公の男女は20代後半の普通の若者ですし。この設定の世界観をいかすなら、せめて片方は実年齢で100歳を超えている、ぐらいのことは考えてしかるべきかと。

成長が止まるということで、確かに登場人物に老人はでてきませんでしたが、欧米人は見た目が老けているので、あまり「世の中に若い人しかいない異様な世界」という感じがしませんでした。いっそ18歳でストップということにして、登場する俳優の実年齢も18歳以下に制限すれば、もう少し見た目的におもしろさがあったのにと思いました。

そしてこの世界を特徴づける最大の要素「この世界の唯一の通貨は時間」ですが、通貨が貨幣から時間に変わる過渡期には社会も混乱したでしょうし、場合によっては人々の価値観や生活様式も変わりそうなものですが、彼らの日常は貨幣が通貨の社会とそれほど違いはなく、その差がメインストーリーにはほとんどからんでこなかったので残念でした。

結局、「もてる一部の富裕層が、もたざる大多数の貧しい人々を支配する歪んだ現代社会」の通貨が「貨幣」から「時間」にかわっただけなんですね。この世界が2つのゾーンに分かれているというのも今の社会と大差ありませんし、主人公がこの社会に抵抗するためにした行動も、銀行強盗をして時間を盗んで貧しい人にばらまくだけで普通の社会とやることがそれほど変わっていません。

他にも、最終的にこの映画では結局「どうしてこんな社会になったのか?どうやってこんな社会にすることができたのか?この社会で皆が希望をもてるようにするためにはどうすればよいのか?」」といった、疑問にはほとんど応えてくれていません。

もちろん「こういう設定ありきの世界の物語だから、それを説明する必要はない」という考え方もあるでしょうし、それでも全然かまわないのですが、それならそれで、「その設定でないと成立しないような謎やトリック、事件」のようなものが欲しかったなあと思います。

題名が「タイム」というぐらいですから、もっと過去の出来事の因果がキーになってもよさそうなものですが、そういう演出も特にありませんでした。

例えばタイムキーパーの一人はこの世界に抵抗しようとして死んだ主人公の父親を知っていたということになっているのですが、結局物語の中でその真相が明かされることも、主人公たちのその後の戦いに大きな影響を与えることもありませんでした。

物語冒頭にでてきた主人公に大量の時間を分け与えて死ぬ人物が、結局なにものだったのかもわからずじまいです。あんなわけありな雰囲気をだしておいてそれはないでしょう。

というわけで、見る前の期待値が高かっただけにいろいろ残念でした。傑作になりそこねたおもしろい娯楽作品、というあたりが自分の評価です。でも気になっていた人は、見て損はないと思います。

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