2014/01/08

映画「夢と狂気の王国」 王国スタジオジブリをのぞいてみた

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新宿バルト9にて「夢と狂気の王国」を見ました。



スタジオジブリのドキュメンタリー映画です。

内容は宮﨑駿、高畑勲、プロデューサーの鈴木敏夫というジブリの大御所3人を中心に、スタジオジブリの設立から始まるジブリの歴史、そしてつい最近公開された映画「風立ちぬ」の製作中の時期のジブリでおこったできごとや、ジブリの人々のインタビューなどの映像記録です。

この「夢と狂気の王国」という題名を見て、「夢の王国」としてもいいようなものを、わざわざ題名に「狂気」とつけているぐらいだから、とかく理想化されがちなジブリを、単なる夢の世界としてかたづけるつもりがないのは確実で、これはおもしろそう!と思ったのですが、正解でした。


ドキュメンタリーながら、ここ数年のどのジブリ作品よりも、おもしろかったです。




宮﨑駿単独のドキュメンタリーであれば、以前NHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」でもやっていたのを見たことがあったのですが、こちらはいかにもNHKらしく、番組中に、「宮﨑駿を『アニメ業界の巨匠、プロフェッショナル』として、こういう風に撮ろう」みたいなNHK側が意図する方向性が一貫して見え隠れしていたのに対し、「夢と狂気の王国」は、どちらかというと、全体のまとまりを多少犠牲にしてでも、よりリアルなスタジオジブリの今を、そのまま映像化しようとしている印象です。

宮﨑駿にしろ、高畑勲にしろ、スタジオジブリにしろ、ある意味狂ったような部分があるからこそ、あれだけクオリティの高い作品が生まれるのだという側面もあるわけですので、この監督のスタンスには非常に好感が持てました。

ちなみにこの映画、監督自身がナレーションのみならず、映画の中にも登場して、自らインタビューしています。そこらへんも普通のドキュメンタリー映画とは一味違っておもしろかったです。

宮﨑駿は、どの場面を見てもスッパスッパたばこを吸いまくっています。これを見て、そういえば最近、テレビでは喫煙シーンが本当に減ったよなあと実感しました。

この映画のクライマックスの一つだと勝手に思っているのは、「風立ちぬ」の主役の声優がまだ決まっていない段階で、「声優を庵野秀明にしてはどうか」と宮﨑駿と鈴木敏夫が二人だけで盛り上がっている場面です。

周囲がドン引きしている様子が、空気感まで手に取るように感じられます。

他にも、宮崎吾朗が川上量生とガチでやりあっている様子とか、だれもが口を揃える高畑勲のとんでもなさと、それをなんだかんだいって許容するジブリの異常さ、ジブリで働くアニメーターに「自分に小さな守りたいものがある人は、宮﨑駿の下で働くのはオススメできない」とまで言わせてしまうような宮崎の暴君ぶりがかいま見えるインタビュー、「風立ちぬ」という作品が戦争に関する内容だけに、避けられない宮﨑駿の政治的な発言や、場合によっては暴言に近いものなどなど、NHKが作っていたらカットしたり、後でナレーションでフォローを入れたりするだろうなあというような場面も、遠慮なく出してくれるので、日本最高のアニメスタジオに集まる天才、異才達の人間模様が、より深くわかって興味深かったです。

作中で、宮﨑駿自身も語っているように、宮崎、鈴木、高畑の3人がいなくなった後のジブリには、おそらく衰退しか待ってないのだろうと思いますが、それだからこそなおのこと、この奇跡のような王国が、一瞬であれ存在したという貴重な証拠を、ドキュメンタリー映画という形で、残すことのできた本作は、本当に価値があると思いました。

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