2012/12/31

はじめての「金瓶梅」 6 「金瓶梅」を漫画で読んでみよう!

わたなべまさこ「金瓶梅」11巻より
潘金蓮の至言。
アヒオ「みなさん、こんにちは。アヒオです。

「はじめての『金瓶梅』」の時間がやってまいりました。

今日は第六回「『金瓶梅』を漫画で読んでみよう!」をおとどけします。

アヒコ「あら、久しぶりね。このシリーズ、まだ続いていたのね。

金瓶梅が漫画になっているなんて知らなかったわ。

私も小説だとなかなか手を出しにくいから、もし漫画でおもしろいのがあったら、そっちをまず試しに読んでみようかしら」

アヒオ「そうだね。漫画だとキャラクターのイメージもつかみやすいし、金瓶梅に限らず、中国の長編小説はとにかく登場人物が多くて、人間関係が複雑なので挫折することが多いから、最初は漫画から入るというのはいいかもしれないね。

それじゃあ、さっそく紹介していこうか。今回は、今でも手に入りやすいものを3作紹介するよ。たぶん、これで全部とは言わないけれど、日本で漫画化されている「金瓶梅」はほぼ網羅しているんじゃないかと思うよ。

まずは一冊目。山上たつひこ「金瓶梅」だ。


山上たつひこ「金瓶梅」全一巻。

山上たつひこ「金瓶梅」
西門慶(左)と潘金蓮です。

アヒコ「こ、このちんちくりんが西門慶!?なんかずいぶんイメージが違うけれど」

アヒオ「そうなんだ。この作品は、ギャグ漫画家山上たつひこらしい、西門慶を主人公にしたギャグ漫画になっているんだ。

もちろん、題材が「金瓶梅」なので、エロ漫画風味も入っているんだけどね」

アヒコ「で、この漫画、おもしろいの?」

アヒオ「うーん。これはあくまでボクの個人の感想なんだけどね・・・。

超クソつまらなかったよ。

山上たつひこのファンだとか、よほどの物好きならいいかもしれないけれど、これはあまりオススメできないね

というわけで次へいくよ。

少女漫画家として有名な、わたなべまさこの「金瓶梅」だ。


わたなべまさこ「金瓶梅」
アクションコミック版。13巻まで出ていますが実は未完。
中身は文庫版の8巻まで。
TUTAYAのコミックレンタルで借りることもできます。



わたなべまさこ「金瓶梅」文庫版
全11巻(完結)。こちらはちゃんと完結してます。
アクションコミック版の13巻までが8巻までに収録されていて、
9巻からは初コミック化になります。

わたなべまさこ「金瓶梅」



この作品は文庫版だとちゃんと完結しているけれど、大判のアクションコミック版では未完のまま絶版になっているから注意が必要だ。

内容は、わたなべまさこ流にアレンジされている部分も多いけれど、今日紹介する三作の中で一番原作に忠実だよ。

原作との最大の違いは、物語の主人公が、金瓶梅の作者である「笑笑生」の正体ではないかと当時噂されていた(現在ではそうではないという説の方が有力)王世貞という人物で、彼が父と妹への復讐のために「金瓶梅」という作品を書くという設定で、作品内で王世貞の物語と金瓶梅本編のストーリーが交互に語られるという、入れ子形式の物語になっているところかな。

お話は金蓮の死で終わっているし、原作にないエピソードが混じっていたり、登場人物が端折られていたりするけれど、大筋では原作を大きく逸脱していないから、漫画で金瓶梅をだいたい知りたい人にはこの作品がいいかもしれないね」

アヒコ「わたなべまさこって少女漫画家として有名な人よね。

この人が「金瓶梅」を描いていたなんて知らなかったわ。それじゃあ、これを読もうかしら」

アヒオ「そうだね。原作を知っていると、いろいろいいたいことはあるかも知れないけれど、漫画化された作品でこれ以上のものというのは現状ないから、原作を漫画でなぞりたい人には、これが一番いいと思うよ。

でも、個人的に一番推したいのは最後に紹介するこれだね。

竹崎真美「金瓶梅」


竹崎真美「金瓶梅」現在20巻まででています(続刊)
月刊誌の「まんがグリム童話」に連載中

竹崎真美「金瓶梅」
なぜか月刊誌の「まんがグリム童話」というレディースコミックに連載中の「まんがグリム童話」というコミックのシリーズに収録されているけれど、もちろんグリム童話とは何の関係もない
この漫画、英語名がなぜか「The Chines Erotic Comic」となっているけれど、本来の金瓶梅の英語名は「Jin Ping Mei」(金瓶梅の中国語音そのまま)だったり、「Golden Lotus」(「金の蓮」=「金蓮」という意味なのでおそらく漢字の意味だけを直訳した誤訳)だったりするので、この訳はもちろん間違い。
この作品をボクがオススメする理由は、漫画としてはこれがダントツにおもしろいからなんだよね」
アヒコ「そうなのね。でもわたなべまさこのやつが一番原作に忠実ってことは、これはあまり忠実じゃないってことなの?

アヒオ「うん。そうなんだ。

この作品は原作からはストーリーもキャラ設定もかなりかけ離れている。

だから、この漫画を読んで「金瓶梅」をわかった気になられると困ってしまうっていうのはあるんだけれど、原作なんてどうでもいいじゃないか!と言いたくなってしまうぐらい、「金瓶梅」の世界を魅力的に再現していて、読んでいるとその世界観に完全に引き込まれてしまうんだ

アヒコ「へええ。そんなにおもしろいんだ。具体的にはどこらへんが面白いのかしら?

アヒオ「なんといってもキャラ設定の見事さだろうね。

原作からしてもともと魅力的な潘金蓮はそのエゴイスティックさに磨きがかかっているだけでなく、人情の機微もわかる女としてよりいっそう魅力的に描かれているし、なにより原作では重要な人物のわりに今ひとつ何を考えているのかよくわからなくてキャラが立っているとは言いがたかった李瓶児を、他人の気持ちを理解できずに悪気なく周囲の人間に迷惑をかける自己中心的な嫌な人間として造形しているのはまったくみごととしか言いようがないね。

これによって潘金蓮と李瓶児のライバル関係がいっそう面白くなっているんだ。

その他、孫雪娥や陳経済、秋菊なんていうどちらかというと地味な脇役キャラクター達が、原作とは似ても似つかないキャラになっているんだけれど、魅力的なキャラにしあがっていて、それがうまくストーリに絡んでいるんだ。

一人一人あげていくときりがないけれど、本当にどのキャラもすごくいいんだよ。

ストーリーも原作を無視しているようで100%無視しているわけでもないので、原作を知っていると、思わぬところで原作のエピソードをうまく使っているのに出くわして感心したりもするし、そういうのを抜きにしても彼らの織りなす人間模様とそれによって巻き起こる事件の数々に、読んでいるうちに夢中になることうけあいだよ」

竹崎真美「金瓶梅」より。
金蓮△
アヒコ「アヒオくんがそこまで推すんだったら、そっちもちょっと読んでみたくなるわね」

アヒオ「こっちはだまされたと思ってぜひ一度読んでみてよ。

実際、ボクも最初はコミックレンタルで借りられる分だけ借りて読んでいたんだけれど、だんだん続きが気になって、今では新刊が出たら欠かさず買っているぐらいはまっているからね。

ちなみに現在20巻まででていて、最新21巻が来年1月に出る予定だよ」

アヒコ「そんなにはまってるんだ(笑)」

アヒオ「うん。こんなおもしろい作品を描いている作者だからさぞかし有名な人だろうと思って調べたら、全然そんなことなくてビックリしたぐらいだよ。

レディースコミックも侮れないな、と思ったね。

もちろん、これを読めばストーリーはともかく、登場人物の名前は頭に入るから、そこから原作へ入るのもありだと思うよ。

そんなわけで今回の「はじめての『金瓶梅』」は漫画化された「金瓶梅」作品の紹介でした」

二羽「それじゃあ、みんな、またねー」


To Be Continued...

<キャスト>

アヒオ・・・アヒル系男子。好きなチームはセレッソ大阪。

アヒコ・・・アヒル系女子。好きなスイーツは牛乳プリン。

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