アンリ・ルソー「夢」
今日は、原田マハの美術ミステリー小説「楽園のカンヴァス」を紹介するよ。
ガチョオ「失敬な。オレかてゴッホやピカソぐらいならわかるぞ。でも、そいつはちょっと聞いたことないなあ」
アヒオ「ちょうどその人達と同時代の人だよ。特にルソーはピカソとは面識もあったしね。
彼は「素朴派」の画家と呼ばれ、特に有名なのは「戦争」かなあ。
アンリ・ルソー「戦争」
で、彼の自画像がこんな感じだ。
アンリ・ルソーの自画像
」
ガチョオ「た、たしかに素朴やな・・・。色使いのコントラストがすごいというか・・・。
でもようわからんけど、この絵って、やっぱりええんか?
オレなんかがこんなこというのもなんやけど、なんつうか、もっとうまい人がいそうな気がするねんけど」
実は、ガチョオ君がそう感じたのももっともで、同時代の人の評価もそんな感じだったみたいだね。
アンリ・ルソーは、彼が存命中、ピカソをはじめとする一部の同業者を除いて、まったく評価されなかった人なんだ」
アヒオ「そうだね。今では西洋美術史があれば、必ず紹介されるレベルの人なんだけどね。
アンリ・ルソーの評価をめぐるそこらへんの経緯は、この「楽園のカンヴァス」の中でも触れられているよ。
この人、おもしろいのはその経歴で、彼はもともとパリの税関の職員で、20年以上そこで働いていて、代表作のほとんどは彼が退職後の50歳以降に描かれたものなんだ。
だから、それまではずっと日曜画家だったってわけ。
そういう人だったから、余計、評価が定まるのには時間がかかったんだろうね」
ある美術収集家の富豪が、このアンリ・ルソーの代表作「夢」にそっくりな絵画、「夢をみた」を密かに所蔵しているのだが、この絵の真贋がはっきりしない。
そこで彼は、その絵が本物かどうかを、ニューヨーク近代美術館の学芸員ティム・ブラウンと、若き日本人ルソー研究者、早川織絵の二人に鑑定させて、その判断が優れた方にこの絵を譲ると言い出した。
富豪は真贋の鑑定の材料として、謎の古書を二人に読ませる。
その古書には、ルソーとピカソの知られざる物語が記されているのだった。
はたして富豪が所有する「夢をみた」は本当にルソーが描いたものなのか、あるいは、よくできた贋作なのか?」
しかもピカソをからめてくれると、オレでもちょっと興味がわくな」
アヒオ「作者は、元美術のキュレーターだったので、我々にはあまりなじみのないキュレーターの仕事だとか、日本の美術館や、展示会の裏事情だとかの豆知識もいろいろ盛り込んでくれているし、実際にある有名な絵画も作中にたくさん登場するから、そういうのに興味があったら、もっと楽しめるよ」
アヒオ「うーん。文章が綺麗だし、話もキレイにまとまっているから、ボクは結構満足だけれど、ガチョオ君みたいなすれっからしのミステリファンが、すごいトリックやどんでん返しを期待する分にはちょっと荷が重いってところかなあ。
純粋なミステリというよりも、ミステリ要素のある面白い小説、って感じかな」
ここまで紹介して興味が出なかったら、別に読まなくてもいいよ。
ちなみにこの本に出てくる絵画作品を画像つきでまとめてくれているサイトがあるので紹介するね。
物語ではピカソが重要な役割をはたすだけあって、ピカソの絵も結構作中にでてくるんだ」
ガチョオ「いやー!ちょうど、最近、たまには人が殺されたり、叙述でひっかけられたりせえへん、素直な小説が読んでみたいと思ってたところなんや!
そんで、美術と聞いて、ぴーんときたんや!そうそう、そういうやつがええわ、こら読まんとアカンなって!」
まあ、そこまで言うなら読んでみてよ。
おっと、そろそろ時間だね。今日はこのぐらいで」
<キャスト>
白鳥(しらとり)先生・・・スワン系アラサー女子。カモ文化学園の教師。独身。学園のマドンナ的存在で、密かに思いを寄せる男子生徒多数。好きな話題はシモネタ。好きな牛丼系チェーン店は松屋。
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