「僕の名前はアヒオ。
僕たちはこれから白鳥(しらとり)先生に、僕たちがまだ知らない世の中のいろんなことを教えてもらうんだ。
白鳥先生、今日もよろしくおねがいします。今回のテーマはなんですか?」
白鳥先生「みなさん、こんにちは。カモ文化学園のマドンナこと、白鳥(しらとり)です。
アヒオ君、アヒコちゃん、今日のテーマは、なんと教育問題よ。たまには私達も真面目なテーマでお勉強しないとね。二人とも、しっかりついてきてね。
実は、日本の教育現場における中国語の地名や人名の表記が今、大変なことになってるの」
アヒコ「中国語の表記が、ですか?
でも中国語って全部漢字で、別に日本語にしてもそのまま漢字を使うだけだから、特に問題ないようにおもえるんですけれど」
白鳥先生「普通そうおもうわよね。実際、私達のころは中国語の固有名詞は漢字をそのまま使って学んでいたし、それで特に問題なかったものね。
ところが今、教科書や地図帳では、中国語の固有名詞を漢字表記ではなくカタカナ表記にしようという流れで、ちょっと変なことになっているのよ」
アヒオ「先生、先生と僕たちが「私達のころ」と同世代のようにくくられるのには違和感を感じます」
白鳥先生「アヒオ君、その発言はイエローカードよ。命が惜しかったらそれ以上踏み込まないほうが身のためよ」
アヒオ「す、すいません」
白鳥先生「まあいいわ。先生の心は琵琶湖ぐらい広いから、聞かなかったことにしておいてあげるわ。
これについて今、問題提起しているのは、中京大学教授(中国文学)の明木(あけぎ)茂夫先生よ。
だから本当は明木茂夫先生の「と学会」での発表の動画を見たり、著書を読んだりするのが一番いいんだけれど、そういう時間がない人もいるでしょうから、今日はここで簡単に紹介するわね」
明木茂夫先生の「と学会」での発表。(2012年にも先生はこのテーマを「第21回日本トンデモ本大賞」で発表していますが、最新のものが現在視聴できないので、今回は2010年のものを紹介。8分ほどの動画です)
白鳥先生「世間のトンデモ本(とんでもない内容の本)やトンデモ物件を品評することを目的としている日本の私的団体のことよ。
「と学会」について解説しだすと話が長くなりすぎて、それだけで今回終わっちゃうので、気になったら後で自分で検索してちょうだいね」
「と学会」について解説しだすと話が長くなりすぎて、それだけで今回終わっちゃうので、気になったら後で自分で検索してちょうだいね」
白鳥先生「さすがにそこまではいっていないけれど、「と学会」で発表するということは、まあ推して知るべしよね。それじゃあいったいなにが問題なのか、それを今からいっしょに見ていきましょうか。
まず、今の学校社会科教材の地図帳の中国地名の表記がこれよ。
まず、今の学校社会科教材の地図帳の中国地名の表記がこれよ。
スーチョワン (四川)
チョンチン (重慶)
チョンツー (成都)
チャンチュン (長春)
チョンチョウ (鄭州)
コワンチョウ (広州)
こんなふうに、先に漢字があってその日本語読みをひらがなでかっこに入れて表記するのではなくて、カタカナ現地音表記がメインで、漢字表記がカッコ入りで小さく添えられているの」
例えば「遼東半島」も本によって「リヤオトン半島」だったり「リャオトン半島」だったりするのよ。
実際に地図帳を調べてみたので、紹介するわね。
二宮書店の地図帳 江西省は「チアンシー省」 香港は「ホンコン(シアンカン)」 |
帝国書院の地図帳 江西省は「チヤンシー省」 香港は「ホンコン」 |
それなら最初から漢字で覚えておけば表記のぶれの心配がないし、中国人とも漢字で話が通じるのに。
それに、香港を「シアンカン」ってなによ?そんなこといってる人、聞いたことないわ。
広東だって「カントン」でどうしてだめなのかしら。広東料理は「コワントン料理」と読むのが正しいとでもいうのかしら?」
ワンリー長城 (万里長城)
ター運河 (大運河)
ウェイ川 (渭水)
チュー川 (珠江)
オーメイ山 (峨眉山)
タイ山 (泰山)
タイ湖 (太湖)
ホワンホー(黄河)
チャンチアン (長江)
ワンリー(万里)長城。 どう考えてもカタカナはいりません。 |
こんな表記が盛り沢山よ。これをトンデモと言わずしてなんと言うという感じね」
白鳥先生「このカタカナ表記には他にも問題があって、地図帳巻末に索引があるんだけど、これがカタカナ現地音で表記してあるの。
だから例えば「桂林」という地名の場所がどこにあるのか調べたくなった時、索引を「けいりん」で引いても、でてこないの。
じゃあどうしないといけないかっていうと、「コイリン」で探さないといけないのよ。だから、あらかじめ「コイリン」という読みを知っておかないと索引が使えないのね」
アヒコ「でも、その「コイリン」っていう読み方を知るためには、地図帳で「桂林」の場所をチェックしないといけないのに、桂林の場所がわからない人はいったいどうすればいいのかしら?って話よね。まったくもって理不尽だわ。
ところで、この「桂林」が「コイリン」っていうのは、現地音表記ってことは、中国人や、中国語がわかる人にこう言ったらわかるんですか?」
アヒオ「いや、無理だね。
前にも言ったと思うけれど、中国語の発音を正確にカタカナにするのはそもそも無理なんだ。
例えば、桂林はピンイン(発音記号)で「Guìlín」と書くんだけど、これをカタカナにする時、今のところ明確なルールはないから、たとえ中国語を知っていても、これがカタカナで「コイリン」になるかどうかなんて、全くわからない。
もし僕が無理やりカタカナにするとしたら「グイリン」ってするだろうな。
だからいくらカタカナ現地音表記を覚えたって、それをそのまま中国人に言っても、彼らは何を言ってるか全くわからないだろうね。漢字で覚えておけば、それを書けば中国人にだってほぼ伝わるのにね。
でも、白鳥先生、なんでこんなことになってしまったんですか?
ひょっとして文部科学省の人って馬鹿なんですか?」
白鳥先生「アヒオ君、そんなことは思ってても言っちゃダメよ!
この国を支えている優秀な彼らのことだから、私達凡俗にはとても考えも及ばないような深い考えあっての方針なのかもしれないじゃない!」
アヒオ「そうですかねえ?」
白鳥先生「まあ、先生だって、そんなことは黄砂の砂粒ほども思っていないんだけどね!」
アヒオ「・・・・・・」
白鳥先生「それはともかく、どうしてこうなっているのかを簡単に言うと、文部科学省のカタカナ現地化音の真の目的は、「現地の人への配慮」ではなくて、「漢字廃止、漢字制限」の方針にあるみたいなの。
この方針にどういう意味があるのかよくわからないけれど、その結果がこの混乱なのよね。
もっと詳しいことは明木茂夫先生の講義や著書で説明してくれているから、興味がある人はそちらを見てちょうだいね」
アヒコ「こんな役にたたないものを覚えさせられていると、肝心の漢字表記を覚えるのがおろそかになってしまいそうで、今の学生はかわいそうね」
アヒオ「でも、ひょっとしたら将来困るのは僕らの方かもしれないよ。
この流れのまま進んで、今後、日本語の中国関係の出版物の固有名詞が全部カタカナになっちゃうっていう可能性もゼロじゃないからね。
万一そうなったら、これまで社会の中で慣用的に使われてきた漢字表記や漢字の読みと文部科学省の決めたカタカナ表記との違いに混乱必至だな」
アヒコ「そっか。これって、ひとごとでもないのね。そうなったら困るわ」
アヒオ「もちろんこれは、今後の中国関連の固有名詞をカタカナでしか知らない世代にとっても不利益なことだろうね。
彼らが将来、中国語を学んだり、過去に書かれた中国関係の文章を読む時、改めて漢字表記を学ばないといけなくなってしまって、きっと僕たち以上に苦労するだろうね。
それってかつて漢字を捨てたベトナムや朝鮮がそうなってしまったように、日本の先人がこれまで積み上げてきた漢籍や中国関連の書籍などの過去の遺産が、専門的に勉強している人以外には全く理解不能なものになりかねないわけで、大げさに言えば、日本の文化破壊じゃないかな」
白鳥先生「そうよね。アヒオ君の言うとおりよ。
こうなったら文部科学省のバ・・・、ゲフンゲフン。もとい、文部科学省の方たちに一刻も早くこの愚かな方針を改めてもらうためにも、明木茂夫先生の今後の活躍を私達も陰ながら応援していきたいわね。
なにはともあれ、私たちの生きているこの世界には、まだまだ知らないことがたくさんあるということが勉強できてよかったわね。
それじゃあ、そろそろ時間よ。ブログを見ているお友達にお別れのあいさつをしましょうか」
三羽「は〜い!それじゃあみんな、またね〜!」
しらないことが おいでおいでしてる
出かけよう くちぶえふいてさ
びっくりしようよ あららのら?
しらべてなっとく うんそうか!
おもしろ地図を ひろげよう
たんけん はっけん ぼくのまち
(NHK教育テレビ「たんけんぼくのまち」のテーマ 作詞:山川啓介 作曲:福田和禾子)
To Be Continued...
<キャスト>
アヒオ・・・アヒル系男子。好きなチームはセレッソ大阪。
アヒコ・・・アヒル系女子。好きなスイーツは牛乳プリン。
白鳥(しらとり)先生・・・スワン系アラサー女子。カモ文化学園の教師。好きな牛丼系チェーン店は松屋。
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