世界に通用する セレッソ大阪の「育て勝つ」流儀
4847092058 | 梶野 智 | ワニブックス | ¥ 1,400 | 2013-12-27
第1章“育成セレッソ"の真実
第2章 セレッソから育った才能の記憶
第3章 波乱万丈のチームマネジメント
第4章 組織を強くするための7つの流儀
第5章 名将クルピ監督との邂逅
第6章 世界で勝負するために必要なこと
第7章 日本サッカーの未来予想図
今日、セレッソ大阪にフォルランが来るとか来ないとかいう嘘みたいなニュースが日本を駆け巡り、びっくり仰天の一日でした。
最初はスポーツ新聞の報道だったので、そんなわけないだろう、と軽く流していたのですが、その後、共同通信からも出ましたので、これはひょっとしたらひょっとするかもしれません。
でも、まだ信じられない。本当に来るんだろうか。
セレッソ今年は本気出しすぎ。そういうところで目立つチームじゃなかったはずなのに・・・。よほど去年のエジノ、ブランコで、中途半端なブラジル人に懲りたんだろうか・・・。
というわけで、今日も今日本で一番熱いチーム、セレッソ大阪関連の本の紹介です。
実は先に紹介したセレッソアイデンティティや「フットボールサミット第17回 セレッソ大阪 咲き誇る桜の才能たち」を買った後、さすがにセレッソだけで3冊も買ったら内容が重複だらけになりそうだと、この本を買うのは後回しにして、これを買おうかどうか迷っていたのですが、買って正解でした。
著者は、昔からのファンには選手時代の印象が強い梶野智。引退後、14年間スタッフとして、強化部長などを務めた梶野氏の視点で、ここ10年ほどのセレッソの運営面での内実や、本人のセレッソ大阪への熱い思いを結構ぶっちゃけて書いてくれています。
これ、サッカー雑誌なんかに載るような表向きの建前じゃなあくて、いまだから言えるようなチーム事情や方針なんかが盛りだくさんで、昔からずっとセレッソ大阪を見ている人や、ここ数年ずっと追いかけている人には「へー!そうだったんだ!」の連続で、意外な話も多くてかなりおもしろいと思います。
例えば、有名な柿谷のヴォルティス徳島への移籍にいたった顛末も、マスコミで紹介されている内容とは、ニュアンスが微妙に違ったりします。
曜一朗を徳島に出す決断をしたことについては、いろいろと報道もされ、世間では曜一朗が練習に6回遅刻したことによる、懲罰の意味も含めた移籍と見られているようだが、それは間違いだ。
たしかに6回の遅刻があったのは事実だが、遅刻したから曜一朗を徳島に放出したわけではない。遅刻したことに対しては、曜一朗は、クラブ規定の罰金を払うなど、チームで決まっている罰則で、かなり重いペナルティを受けている。それ以上のペナルティをクラブが課すことはない。
(中略)
曜一朗が再生するために、プレーできる場所を探していたところ、ちょうどそこに、徳島から「ぜひ、我々のチームに柿谷選手を貸して欲しい」というオファーがあり、あわただしく期限付き移籍が決まったのだった。
(第1章“育成セレッソ"の真実 柿谷の”セレッソ愛”と徳島移籍の真相)
その他、当時Jリーグ屈指の実力者だったマルチネスが、まだまだやれそうなのに2011年を最後に退団してしまったのはなぜだったのか、あるいは、ソアレス監督の途中解任から、クルピ監督の緊急再登板にいたる水面下でのやりとりなどなど、周りからうかがい知ることの難しい、当時なんとなく疑問だったことなどが、あれこれがわかります。
他で興味深かったのは、クルピ監督の指導方法の章でしょうか。
クルピ監督は、攻撃の選手に対してほとんど制約を設けない。
攻撃に関する制限がなく、選手の個々のイマジネーションを尊重し自由にやらせる部分が多いため、選手の本来持っている想像力がかきたてられ、それがうまくいけば素晴らしいパフォーマンスにつながる。
結果が出ればひとつの成功体験となるし、仮に失敗してもそれが”ポジティブなトライ”の経験値として積み上げられていくのだと思う。
クルピ監督が厳しくいうのは、とにかく最後のシュートの精度のところである。
たとえばシュートチャンスがあった場合、思いっきりシュートを打つのではなく、体のバランスを保ちながら、しっかり狙いを持ってシュートを打たなければならないということだ。
攻撃陣に対する、唯一の制限、決めごとだといってもいい。
(中略)
攻撃の仕方(シュートまでの過程)に規則はないが、シュートには規制はあり、シュートに対しては非常に細かく厳しく指導している。要はそこが、数字(結果)に直結してくるからだ。
(後略)
(第5章 名将クルピ監督との邂逅 褒められるシュート、怒られるシュート)
攻撃の形ではなく、シュートの形に力点を置いて指導する。なるほど、こんな指導の仕方もあるんですね。
セレッソアイデンティティを読んでいても思ったのですが、ここ数年、セレッソが(降格しそうにはなりながらも)、順調に発展していき、観客動員も増え、有望な若手がどんどん出てきて、チームカラーにもだんだん誰もが感じる「セレッソらしさ」が出てきているように感じられたのは、偶然でもなんでもなくて、フロントやマネジメントレベルでしっかり哲学を持って運営していたからなんですね。
ちなみに梶野氏は、鹿島アントラーズを理想のチームとして、鹿島を目標に、努力してきたと述べています。
去年、梶野氏はセレッソの強化部長を退任し、クルピ監督も勇退しましたので、セレッソ大阪も一時代が終わった感があり、今年いろいろ大きな変化が待っていると思いますが、願わくば、今後も「あのころはよかったのにな」とならないように、それこそ鹿島アントラーズのように継続して、成長していって欲しいと思います。
それにしてもフォルラン、本当に来るんだろうか・・・。
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