2014/08/04

映画「太秦ライムライト」 失われゆく古き良き時代劇の伝統と、斬られ役一筋の男の生きざまと

映画「太秦ライムライト」を観に行ってきました。

東京ですら、今、上映館が2館しかなく、しかも一日1〜2回しか上映しないような地味な映画なのですが、なぜか自分の周囲の映画好きが何人も見ていて、しかもみんな絶賛しています。

去年の「立候補」もそうでしたが、そういう映画は間違いなく当りだと思い、午前8:30という上映時間(新宿バルト9は一日でこの回一回のみ上映)にも負けず頑張って行ってきました。



主役が「斬られ役」の脇役俳優というこの映画、ストーリー自体は完全なフィクションなのですが、主役を務める福本清三は映画の役柄と同じ「5万回斬られた男」の異名を持つ有名な切られ役の俳優さんです。

東洋のハリウッドこと太秦(うずまさ)を舞台に、彼の職人的な実直な生き様に、衰退しつつも時代の波に抗ってもがいている時代劇というジャンルの現状を重ねあわせた、見るものに郷愁を感じさせる物語です。

タイトルに「ライムライト」とついているのは、チャップリンの映画「ライムライト」の中の名言、「The glamour of Limelight,from which age must pass as youth centers.  (ライムライトの魔力 若者の登場に老人は消える)」からのもので、これはおそらく、ベテランから若手への交代と、伝統的な時代劇から、CGなどを駆使した新しい表現で生まれ変わりつつある時代劇への交代を、映画のテーマとしているからなのでしょう。

感想ですが、まだ今年も半分と少ししか過ぎていないのに、おそらく個人的な今年見た映画の中で1位はこれになるだろうな、と思うぐらいによかったです。

どこらへんが良かったかというと、もうただただこの映画に出てくる俳優さんたちがみんな良かったことに尽きます。

話自体は、いってみればよくあるストーリーで、ベタな展開だらけなのですが(その中でもアルマゲドンの名場面を想起させるスローモーションでの行進のシーンはおもしろすぎて最高でした)、主役の福本清三や、準主役の山本千尋はもちろん、その脇を固める俳優さんたちが本当に豪華な名優ばかりで、どの場面の演技もすばらしく、ぐいぐい物語の中に引き込まれてしまい、本物の役者さんのすごさを改めて思い知らされることになりました。

映画も終盤に入ると、観客に涙をこらえている人がたくさんいるのが映画館の雰囲気からわかってしまいました。コメディ映画で盛り上がって会場が一つになって一体感を感じたことはあっても、こんなふうに会場全体がしんみりしてしまう体験はあまりなかったです。

自分はどちらかというと、「感動巨編」とか、いかにもお涙頂戴な話には、かえって冷めてしまうほうなのですが、この映画は、「時代の流れに取り残された側の物語」というのが自分的にツボなのと、役者さんの名演技があいまって、やられてしまいました。

やっている映画館が少なく、一日の上映回数も少ないので、なかなか観るのは大変かもしれませんが、アクションシーンの迫力や、主人公のプロフェッショナルな斬られっぷりをしっかり見るためにも、無理してでも映画館で観る値打ちのある映画だと思いました。

願わくばこの映画も「立候補」のように、小さい映画館を巡業してじわじわとロングランになっていく展開になってくれたらいいな、と思います。


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