2014/06/01

泡坂妻夫「生者と死者―酩探偵ヨギガンジーの透視術」 「消える短編小説」入ってます!

生者と死者―酩探偵ヨギガンジーの透視術 (新潮文庫)
泡坂妻夫「生者と死者―酩探偵ヨギガンジーの透視術」

先日紹介したビブリオバトルの際、私が紹介した本がこちらです。

オススメ本をみんなでプレゼン 「ビブリオバトル」をやってみた in 市ヶ谷 2014年5月

泡坂妻夫は、ミステリ作家としても、例えば「日本のミステリベスト100」みたいな企画があったら、必ず彼の作品が1つ2つはランクインするような人です。

しかも職業が紋章上絵師、その他奇術師としても日本有数の実力者で、自らの本名を冠した奇術賞(厚川昌男賞)を持っているようなマルチな才人です。

で、この「生者と死者」は作者のシリーズキャラクター「ヨギガンジー」といううさんくさいおっさんとその弟子の参王不動丸と本田美保子が、心霊術を駆使して活躍するドタバタミステリーなのですが、本書の特筆すべきところはなんといっても、「消える」短編小説が入っているところでしょう。

私はどちらかというと、できるだけ電子書籍化されている本は電子書籍で買って読みたい方なのですが、この作品ばかりはそういうわけにはいきませんでした。




「紙の本ならではのトリック」とはまさに。
電子書籍化は不可能とまでは言わなくとも、普通にやったら無理でしょう。


1,まず袋とじのまま読む(短編小説部分)
2,袋とじ部分を全て開けて、読み終わった部分も含めて最初から読み直す(長編小説部分)


最初はこのように袋とじが随所にあるので、それを「開けずに」最初から読んでいくのです。


袋とじを開けずにそのまま読み終えると、次は袋とじを開けます。
開けるとあら不思議、さっきまで読んでいた短編小説が長編小説の中に取り込まれて「消えて」、全体が一編の長編小説に。

この短編小説が「消える」というのがどういう意味なのかわかりにくいかもしれませんが、読んでみると確かに「消えて」しまうのがわかると思います。

袋とじの中の部分以外は都合2回ずつ読むことになるのですが、不思議なことに内容の重複は一度もないのです。

という非常に凝ったこの本、純粋にミステリとして、小説としてそこまで「おもしろいか?」と聞かれると正直、ちょっと言葉を濁してしまうのですが、この他では味わい得ない「おもしろい」読書体験ができるだけで、充分に値打ちがあると思います。

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