2014/11/03

漫画 横山光輝「殷周伝説」全22巻


殷周伝説―太公望伝奇 (1) (Kibo comics)

最近読んだ漫画。横山光輝「殷周伝説」全22巻。

横山光輝の遺作であり、題名の通り、古代中国の殷(商)王朝末期から周が興るまでを描き、殷の紂王(ちゅうおう)や妲己(だっき)が敵役、太公望が主人公で活躍する「封神演義」でもお馴染みのお話で、昔ジャンプで連載していた藤崎竜の「封神演義」よりこちらの方が連載は先だったみたいです。ちなみにこちらの太公望は、ちゃんとおじいちゃんです。

この「殷周伝説」は、ある程度「史記」などの史実を元に「封神演義」の要素も加えて横山光輝流にこの時代をアレンジしているので、「封神演義」ほどファンタジー全開ではなく、ある程度歴史的事実に忠実ではあるのですが、そうはいっても古代の話ということもあって、仙人やら超能力者やら、妖術やらがたくさん出てきます。

読んだ感想としては、それほど期待していなかったわりに、思ったよりはおもしろかった、という感じです。まあまあかな。でも、なんだかんだいって、さすが横山先生、読ませてくれます。

特に序盤の妲己の極悪非道ぶりは、なかなか念入りに描かれていて、いい感じに盛り上げてくれます。これを読めば炮烙(ほうらく)の刑がどんな刑罰なのかもバッチリわかります。

しかし、題材的に殷と周の一騎打ちの単純な勧善懲悪ものなので、どうしても途中で中だるみしてしまうのは避けられませんでした。

さらに主人公側である太公望(呂尚、あるいは姜子牙)率いる周軍は、あんまり連戦連勝では話としておもしろくならないからか、殷軍相手に適当に苦戦するのですが、いくら殷の方が数が多いとはいえ、殷陣営と比べると、周側のメンバーの方が圧倒的に強そうな超能力使いが綺羅星のごとく揃っているので、殷側から多少強いのが出てきて苦戦しても、周のメインキャラを数人出せば勝てるだろうと思ってしまい、読んでいてあまり緊張感がなかったんですよね。

この漫画でも、「封神演義」でお馴染みの「哪吒(なた)」や「楊戩(ようぜん)」らは特殊能力を持つスーパーな存在なので、周が苦戦していると「どうしてさっさと哪吒をださないんだ?」と、なんだか太公望が無能に見えてきてしまって。

そしてこれが一番不満だったのですが、物語は終盤の殷の滅亡と、周王朝建国後あたりをずいぶんあっさりと流して、尻すぼみで終わってしまうのです。

序盤に十分に伏線を張っていた太公望の有名な「覆水盆に返らず」のエピソードすら省略されていたので、最後まで読んで少し拍子抜けしてしまいました。

ここらへんは、横山先生が連載当時すでに体調があまり良くなかったためかもしれませんが、惜しまれます。

当然のことながら、三国志より古い時代の話ですので、これを読めば三国志で諸葛孔明が参考にした太公望の計略(例えば、食事を作るかまどの数を実際の兵士の数より増やして大軍に見せかけて敵を欺くなど)やエピソードの元ネタがいろいろ出てきますので、三国志ファンにも楽しめると思いますよ。

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