井波律子「反逆と反骨の精神 三国時代―南北朝 (中国人物伝 第II巻) 」を読みました。
この「中国人物伝」というシリーズは、井波律子の過去の様々な著作から、出版社をまたいで人物伝を抜き出して、時系列に並べ替えたオムニバス版で、これを読めば時代と人物が同時にわかるというなかなかいい企画の本です。
ちなみに今回のネタ元となった著作は以下のものです(それぞれ画像をクリックするとAmazonのリンクに飛びます)。私はこの中の「奇人と異才の中国史」だけ既に読んだことがあったのですが、ちょうどいいことに、それ以外は未読でした。
井波律子の本はすごく読みやすくて、説明も丁寧でわかりやすいので好きです。
第二巻にあたるこの本の時代は「三国時代―南北朝」。
目次はこうなっています。
はじめに
第一部 飛翔する英雄たち――三国志の時代
(群雄割拠の時代 曹操・劉備・孫堅父子/光と影の英雄 曹操と劉備/颯爽たる名家の御曹司 周瑜/軍事と政務のスーパースター 諸葛亮/蜀の五虎将軍 関羽・張飛・趙雲・馬超・黄忠/詩人として武人として 曹操・曹丕・曹植/偏屈に徹した文人 孔融/檄文作家の面目 陳琳/曹氏をめぐる女性たち 卞皇后・丁夫人・甄夫人/粘り強い簒奪者 司馬懿/悲惨から栄光へ 魏の諸葛氏一族/激動を超えて 魏の夏侯淵一族)
第二部 風狂と反骨の精神――魏晋南北朝
(竹林の七賢 康・阮籍・阮咸・劉伶・山濤・王戎・向秀/西晋の全土統一と最大の功労者 杜預/したたかな名門貴族 琅邪の王氏/建国の名臣と反逆者 王導・王敦/肝のすわった「書聖」 王羲之/気のいい反逆者 桓温/南朝に殉じた新興貴族 陽夏の謝氏/老いてなお凜冽なる才媛 謝道蘊/とびきりの異才 葛洪/「痴絶」と呼ばれた天才画家 顧 之/反骨の田園詩人 陶淵明/痛切な体験を「家訓」に 顔之推)
初出一覧
略年表
第一部の三国志の時代の方は、後半の諸葛氏や夏侯氏のあたりの話は新鮮だったのですが、基本的にお馴染みの話が多く、少し食傷気味だったのですが、第二部の東晋を中心にした南北朝時代は中国史の中でもスルーされがちなので、勉強になりました。
王羲之や陶淵明あたりは、中国史全体でも特に重要な人物ですね。
列伝スタイルですので、同じ時代を生きる人物同士ですと、事件や出来事などの記述が重複することも多いので、三国志の時代の方は読んでいてちょっと苦痛だったのですが、逆にあまり知識がなかった東晋時代以後に関しては、そのおかげで一度読んだだけではなかなか頭に入らないここらへんの時代の流れがようやく少しは覚えられたような気がします。
はじめまして。Google+から参りました。
返信削除イモリとかカエルとかばかり書いていますが実は最終学歴は西欧中世史でして、未だに歴史ヲタを拗らせておりラノベやゲームからデビューしたBlogに考証で突っ込むというイタい趣味をもっております。
中国史は火薬や水車などの技術の東西伝播を調べていている中で、
・宮崎市定先生の論文集で宋→唐→南北朝と遡ってハマる
・某光栄のゲームもあって三国志(東漢末期)にもハマる(危うく留年しかける)
・卒論で前漢の「塩鉄論」を扱おうとしたら教授に怒られて西欧史にイヤイヤ戻る
という甘酸っぱい(今となっては汗臭い)思い出があったりします。
不勉強にも井波律子さんの本は未読なので「人物伝」から挑戦してみたいと思います。
…と書こうと思っていたらちくま版「正志」や「トリックスター群像」を書かれた方だったのですね!特に後者には柔軟な書きぶりに魅せられました。何忘れてんだか…>自分
ちなみに私は、魏晋南北朝といえば赫連勃勃の大ファンです。
彼を無理やりアッティラにしたラノベを書こうとして挫折した恥記憶が。
はじめまして。
削除宋からさかのぼってハマるなんて珍しいパターンですね。
自分もまだまだ勉強不足ですのでここらへんの時代はもう少し見ていきたいと思っています。
今後ともよろしくお願いいたします。